前回、現場が自らITを使いこなす時代が到来していることをお話ししました。その背景にある3つの技術革新について軽くご説明しましたが、今回は具体的な事例を交えながら詳しく見ていきます。
😲「え、それ本当に〇〇さんが作ったの?」
先日、ある企業の担当者が、こんなシステムをたった数日で作り上げました。
これまで「電話のあとメモを取って、CRMに入力して、タスクを登録して...」と10分以上かかっていた作業が、完全自動化され、かつ質も向上しました。従来なら外部に発注して数百万円かかる規模のシステムです。
「どうやって?」
このシステムには3つの技術革新(AI、ノーコードツール、クラウドサービス)がすべて詰まっています。前回、これら3つの技術革新について軽くご説明しましたが、今回は実例を通して、それぞれの技術がどう使われているのか、詳しく見ていきましょう。
この事例で使われている3つの技術
まず、このシステムの仕組みを分解してみます
①AI技術の活用場面
- •文字起こしデータから重要な情報を抽出
- •会話内容を簡潔に要約
- •Todoタスクを自動で判断・生成
②ノーコードツール(iPaaS)の活用場面
- •電話アプリ ⇄ CRM ⇄ タスク管理ツール を連携
- •データの受け渡しと処理フローを自動化
- •AI処理を組み込んだワークフローを構築
③クラウドサービスの活用場面
- •電話アプリ(文字起こし機能付き)
- •CRM(顧客管理)
- •タスク管理ツール
それでは、各技術について詳しく見ていきましょう。
🤖①AIの進化:機能としてのAI、そして常にポジティブなスペシャリストサポーター
機能としてのAI活用
冒頭の事例では、AIが以下の役割(機能の提供)を果たしています:
1. 文字起こしデータから重要情報を抽出
生の文字起こし(長文・冗長)
↓ AI処理 ↓
「顧客名:○○株式会社」
「担当者:△△様」
「案件:システム更新の検討」
「予算:500万円程度」
「次回アポ:来週木曜14時」
2. 会話全体を簡潔に要約
30分の会話の文字起こし(数千文字)
↓ AI処理 ↓
3行の要約:「システム更新を検討中。予算500万程度。来週木曜に詳細ヒアリングのアポ確定」
3. Todoタスクを自動判断・生成
会話内容の分析
↓ AI処理 ↓
「提案資料の作成」(期限:来週水曜)
「過去の類似案件の調査」(期限:明日)
「見積もり依頼を技術部門へ」(期限:今週中)
このような高度なAI機能が、
プログラミングなしで利用できる
ようになりました。
サポートスペシャリストとしてのAI活用
機能としてのAI活用だけではなく、システムの構築業務をサポートするサポートスペシャリストとしても非常に重要な役割を担っています。
即座に質問・解答
設定などで分からないことをすぐに質問して、解答を得られる。画面をスクショしてAIが即座に解説。
自然言語で指示
複雑な設定やコードを、自然言語で指示して生成できる。AIが処理方法を提案してくれる。
アイデア創出
アイデアをブレストして、最適な解決策を見つけられる。AIが複数の選択肢を提示。
つまり、AIが「技術の壁」を取り払ってくれるのです。
⚡②ノーコードツール(iPaaS)の進化:AI Agent実装プラットフォームへ
営業電話システムでのiPaaS活用
冒頭の事例では、iPaaS(統合プラットフォーム)がすべてのサービスを繋ぐ司令塔として機能しています
電話アプリ
↓
[iPaaS - Make.com または n8n]
- ├→ 文字起こしデータを取得
- ├→ AIに要約処理を依頼
- ├→ CRMから顧客情報を検索
- ├→ 要約データをCRMに保存
- └→ タスク管理ツールに新規タスクを作成
ノーコードツールは「アプリ連携ツール」を超えた
従来のノーコードツール(2020年頃まで)
- •複数のアプリを連携させる
- •データを自動で転送する
- •定型的なワークフローを設定
現在のノーコードツール(2024-2025年)
従来の機能に加えて:
目的を達成するために自らが考えて処理を実行する(≒ AI Agent)
従来のノーコードツールは、処理を正しく実行してもらうためには、処理の順番・内容を細かく定義する必要がありましたが、現在のノーコードツールはAIが指示に従い判断し必要な処理を実行してくれます。
重要なのは、これが「ドラッグ&ドロップ + 簡単な設定」だけで実現できる、という点です。
つまり、
非エンジニアでも、高度なAIシステムを構築できる時代になったのです。
☁️③クラウドサービスの進化:低コストで様々なツールが利用可能
営業電話システムで使われているクラウドサービス
冒頭の事例では、以下のクラウドサービスが組み合わされています
電話アプリ(文字起こし機能付き)
例:Dialpad、Zoom Phone など
月額:約2,000〜5,000円/ユーザー
機能:通話の自動文字起こし、録音、API連携
CRM(顧客管理)
例:Salesforce、HubSpot、Pipedrive など
月額:約3,000〜20,000円/ユーザー
機能:顧客情報管理、商談管理、レポート作成
タスク管理ツール
例:Asana、Todoist、ClickUp など
月額:無料〜2,000円/ユーザー
機能:タスク作成・管理、期限設定、担当者割り当て
iPaaS(ノーコードツール)
例:Make.com、n8n、Zapier
月額:無料〜 3,000円/環境(利用ボリュームに依存)
機能:AI Agent、ワークフロー、クラウドサービス統合
クラウドサービスの利点
低コスト
月額数千円から、企業レベルのツールが使える
豊富なラインナップ
各分野に特化した専門サービスが利用可能
メンテナンス不要
自動アップデートで常に最新の機能
資金や技術インフラがなくても、世界最高レベルの様々なITツールを組み合わせて簡単に使いこなせる時代になったのです。
3つの技術革新がもたらす新しい可能性
改めて、冒頭の営業電話システムを見てみましょう:
- 営業担当者が電話終話
- → 電話アプリが文字起こしを作成 ← ③クラウドサービス
- → 文字データをAIが要約 ← ①AI技術
- → 関連するお客様データに紐づけて通話要約データを保存 ← ②iPaaS + ③クラウドサービス
- → 通話要約からTodoタスクを新規に作成 ← ①AI技術 + ②iPaaS + ③クラウドサービス
これら3つの技術革新により
- ✓ 技術的な壁が低くなった(AI)
- ✓ 高度なシステムを簡単に作れるようになった(ノーコード + AI Agent)
- ✓ コストとインフラの壁がなくなった(クラウド)
結果として
「現場の人間が自らITを使いこなして、業務を最適化できる時代」
=「IT Optimizerが必要とされる時代」
が到来すると考えています。
次回予告
次回は、IT OptimizerとIT Engineerの違いについて、詳しく見ていきます。