前回、IT OptimizerにはBuilder、Designer、Orchestrator、Architectという4つの成長レベルがあることをお話ししました。
今回は、実際にITエンジニア未経験者をIT Optimizerに育成した実践記録をご紹介します。どんな壁にぶつかり、どう乗り越えたのか、リアルな体験をお伝えします。
育成対象者のプロフィール
Aさん(営業職)
- •年齢:30代前半
- •職種:営業(5年経験)
- •ITスキル:Excel基本操作のみ
- •プログラミング経験:なし
Bさん(経理職)
- •年齢:20代後半
- •職種:経理(3年経験)
- •ITスキル:Excel関数は得意
- •プログラミング経験:なし
2人とも「プログラミングは難しそう」「自分には無理」という先入観を持っていましたが、業務の効率化には強い関心がありました。この「課題意識」が、成長の原動力になりました。
育成過程で見えた4つのつまづきポイント
育成を進める中で、ITエンジニア未経験者が共通してつまづくポイントが4つ見えてきました。
「データの流れ」が見えない
具体的な症状
- • 「このデータはどこから来て、どこへ行くのか」がわからない
- • エラーが出ても、どこが問題なのか特定できない
- • ワークフローの途中で何が起きているのか想像できない
解決策
- ✓ 紙に「データの旅路」を描いてもらう
- ✓ 実際に動かして、各ステップで何が起きているか確認
- ✓ 「入力→処理→出力」の3ステップで整理する習慣
実践例(Aさん)
営業日報の自動化を作る際、最初は「Gmailから何かを取ってきて...」程度の理解でした。そこで、A4用紙に「Gmail → テキスト抽出 → 整形 → Googleスプレッドシート → Slack通知」という流れを矢印で描いてもらい、各ステップで「何のデータが」「どう変わるか」を明確にしました。これにより、Make.comでワークフローを組む時の理解度が劇的に向上しました。
条件分岐の概念がない
具体的な症状
- • 「もし〜なら」という考え方に慣れていない
- • 複数の条件を組み合わせるとパニックになる
- • エラーハンドリング(失敗した時の処理)の発想がない
解決策
- ✓ 日常生活の例で説明(「雨なら傘を持つ、晴れなら持たない」)
- ✓ 最初は1つの条件から、徐々に複雑にしていく
- ✓ フローチャートを一緒に描く
実践例(Bさん)
請求書処理の自動化で、「金額が10万円以上なら上長承認、未満なら自動処理」という条件分岐を作る際、最初は混乱していました。そこで、「レストランで食事する時、予算オーバーなら別の店を探す、予算内なら入る」という日常の意思決定と同じだと説明。紙に「YES/NO」の分岐を描いてもらい、徐々にMake.comの「Router」機能の使い方を理解してもらいました。
エラーへの恐怖心
具体的な症状
- • エラーが出ると「壊した」と思い込む
- • エラーメッセージを読まずに諦める
- • 試行錯誤することへの抵抗感
解決策
- ✓ 「エラーは正常な学習プロセス」と伝え続ける
- ✓ エラーメッセージをAIに貼り付けて解説してもらう体験
- ✓ 小さな成功体験を積み重ねる
実践例(両名)
2人とも最初はエラーが出ると手が止まっていました。そこで、「エラーメッセージをChatGPTにコピペして、何が問題か聞いてみて」と指示。AIが優しく「ここのデータ形式が違います」と教えてくれる体験を通じて、「エラーは怖くない、むしろ改善のヒント」という認識に変わりました。今では自分でエラーを解決できるようになっています。
「完璧主義」の罠
具体的な症状
- • 「完璧に理解してから作ろう」として動けない
- • 70点の自動化より、手作業を選んでしまう
- • 細部にこだわりすぎて、本質を見失う
解決策
- ✓ 「まず動くものを作る、改善は後で」の文化
- ✓ 「50点でもいいから1週間で作る」という期限設定
- ✓ 「完成」ではなく「継続的改善」の思考
実践例(Aさん)
Aさんは最初、「全ての顧客パターンに対応したい」と考え、何ヶ月も設計フェーズに留まっていました。そこで「まず主要顧客5社だけに対応するバージョンを1週間で作ろう」と提案。実際に動かしてみると、想定していなかった問題が見つかり、むしろ早く作ってよかったと気づきました。今では「まず50点で動かす→使いながら改善」が習慣になっています。
🔄「転移学習」で加速する成長
育成で重要だったのが、「転移学習」という考え方です。
転移学習とは?
ある分野で学んだ知識やスキルを、別の分野に応用すること。IT Optimizer育成では、既存の業務知識をITスキルに転移させることで、学習を加速できます。
3つの転移学習パターン
📊パターン1:Excel → ノーコードツール
Bさん(経理)の事例:
Excelで「IF関数で条件分岐」「VLOOKUP で参照」をしていた経験が、Make.comの「Router(条件分岐)」「データ検索」の理解に直結しました。「Excelでやっていたことを、複数のアプリ間でやるだけ」と理解することで、学習が一気に進みました。
💡 転移のコツ
「あなたがExcelでやっていること」を起点に説明する
📝パターン2:業務フロー → ワークフロー設計
Aさん(営業)の事例:
営業プロセス(リード獲得→商談→見積→受注)を普段から整理していたAさん。この「業務フロー」の考え方が、そのまま自動化ワークフローの設計に活かせました。「今自分がやっている手順を、システムにやってもらうだけ」という理解で、複雑なワークフローもスムーズに設計できるようになりました。
💡 転移のコツ
「今やっている業務の手順書」を自動化設計のベースにする
🎯パターン3:問題解決思考 → デバッグ思考
両名の事例:
営業や経理の現場では日々「問題が起きる→原因を探る→解決する」というサイクルを回しています。この思考プロセスは、そのままITの「エラーが出る→ログを見る→修正する」というデバッグに転移できます。「仕事で普段やっている問題解決と同じ」と気づいてから、エラーへの恐怖心が減りました。
💡 転移のコツ
「業務で培った問題解決力」がそのままIT学習に使えることを認識してもらう
転移学習の威力
「ゼロから学ぶ」のではなく「既存の知識を活かす」ことで、学習スピードが2-3倍になります。これがIT Optimizer育成の秘訣です。
✨6ヶ月後の成果
Aさん(営業)の成果
自動化した業務
- • 営業日報の自動集計・共有
- • 商談後の議事録AI要約
- • 見積書の自動生成
- • リード情報のCRM自動登録
削減時間
週15時間
→ 顧客訪問時間が1.5倍に増加
Bさん(経理)の成果
自動化した業務
- • 経費精算の自動承認フロー
- • 請求書データの自動抽出・入力
- • 月次レポートの自動生成
- • 支払予定の自動リマインダー
削減時間
週20時間
→ 財務分析業務に時間を使えるように
2人の共通点
- Builderレベルに到達(自分の業務を自動化できる)
- 他部署からの相談に対応できるようになった
- 社内勉強会で講師を務めるまでに成長
- 「IT=難しい」という先入観が完全に消えた
非エンジニア育成の5つのポイント
1. 業務課題から始める
「技術を学ぶ」ではなく「課題を解決する」が出発点。本人が困っていることを自動化することで、モチベーションが持続します。
2. 小さな成功体験を積む
いきなり複雑なシステムではなく、「Gmailの添付ファイルをGoogleドライブに保存」など、1日で完成する小さなタスクから始めます。
3. AIを味方につける
ChatGPTやClaudeを「24時間いつでも質問できる先生」として活用。エラーメッセージをコピペして聞く習慣をつけます。
4. 「完璧」より「継続」
50点でもいいから動くものを作る。完成してから改善するサイクルを回すことで、実践力が身につきます。
5. 転移学習を意識する
「あなたの既存スキルが活かせる」と気づかせることで、心理的ハードルが下がり、学習が加速します。
IT未経験でも、IT Optimizerになれる
✅ 重要なのは「技術力」ではなく「課題意識」
プログラミングができなくても、業務の課題を見つけて改善したい気持ちがあれば十分です
✅ 「つまづきポイント」は予測可能
データの流れ、条件分岐、エラー、完璧主義 - この4つを意識すれば乗り越えられます
✅ 既存スキルを活かせる「転移学習」
Excel経験、業務フロー理解、問題解決思考 - 全てがIT学習に活かせます
あなたの組織にも、
IT Optimizerの「原石」がいます
適切なサポートがあれば、誰でもIT Optimizerになれるのです。
次回予告
次回は、IT Optimizerが実際に作り上げたプロセス改善の実例を、技術的な詳細も含めてご紹介します。