💡なぜこのスキルが重要なのか?
業務自動化の実装は、複雑に見えますが、本質的にはシンプルです。それは、私たちの言葉を「ロボット(コンピュータ)が理解できる形」に翻訳することです。
この記事では、非エンジニアでも実践できる業務プロセスの記述方法を、基礎から実践まで解説します。
🤖人間とコンピュータの決定的な違い
業務自動化の第一歩を踏み出す前に、まず理解すべき重要な事実があります。
👨💼人間のコミュニケーション
理解(文脈を読んで対応)
相手の意図を汲み取れる
柔軟性
「いい感じに」「お願い」といった曖昧な指示でも理解できる
共感
相手の期待を汲み取れる
🤖コンピュータの特性
超・真面目なロボット
曖昧な指示は一切通じない
??? (理解不能)
具体性が必須
すべての手順を明確に定義する必要がある
重要な結論
業務を自動化する第一歩は、私たちの言葉を「具体的で論理的な手順」に翻訳すること(プロセス記述)です。
🔍業務の「水面下」にあるものを可視化する
私たちの日常業務の多くは「なんとなくの流れ」や「暗黙知」で行われています。
メール対応、書類作成、問い合わせ処理...
私たちが普段「なんとなく」行っている業務には、実は複雑なプロセスが隠れています。
• どこで判断を変えたのか?
• 誰に引き継いだのか?
• 例外はどう処理したのか?
• 作業の境界線はどこ?
🎯 ロボットに仕事を任せるために
この水面下にある手順・条件・判断をすべて言語化し、可視化する必要があります。
📊ロボット語の基本文法:フローチャート
プロセスを可視化する最も基本的なツールが「フローチャート」です。
基本要素
1. 楕円(開始/終了)
業務のスタートとゴール
2. 長方形(処理)
具体的な作業やアクション
3. ひし形(分岐)
Yes/Noで分かれる条件判断
4. 矢印(フロー)
作業が進む順序
実践例
✨ ポイント
どんなに複雑に見える業務も、基本的にはこの4つの記号の組み合わせだけで表現できます。
「誰が」やるかを明確にする:スイムレーン
フローチャートだけでは「誰が」その作業を行うのかが不明確です。そこで登場するのが「スイムレーン」です。
スイムレーンとは
プールのコースのように、担当者ごとに「レーン(泳ぐコース)」を引くことで、責任の所在とボールの受け渡しが明確になります。
実践例:申請承認プロセス
【申請者のレーン】
【上長のレーン】
【経理のレーン】
🎯 スイムレーンの効果
手順だけでなく、担当者の境界線(レーン)を引くことで、責任の所在とボールの受け渡しが明確になります。
自動化においては「ここは人間」「ここはロボット」というレーン分けが設計図の基礎になります。
「タスク」と「手順」を混同しない
ロボットによる自動化を成功させるためには、「タスク」と「手順」の違いを理解することが極めて重要です。
タスク
「見積書を作成する」
• 目的を持った一塊の作業
• 自動化の「範囲」を決める単位
❌ 問題点:
ロボットは動けません(粒度が大きすぎる)
手順(モジュール)
1. 顧客マスタから住所を取得する
2. 商品単価を計算する
3. Excelテンプレートを開く
4. セルB2に入力する
• 実行可能な最小単位のステップ
• 自動化ツールの「モジュール」になる単位
⚠️ 重要
この手順レベルまで分解して初めて、ロボットは実行可能になります。
❓隠れたプロセスを掘り起こす「5つの質問」
曖昧なプロセスを明確にするために、以下の5つの質問を繰り返し問いかけます。
⚙️1. Action(アクション)
「具体的に、今何をしましたか?」
• 曖昧な表現を避ける
• 実際の操作を記述する
例:「確認する」→「セルの値が空白でないかチェックする」
👤2. Actor(アクター)
「その判断は誰が行いましたか?」
• 担当者を明確にする
• 人間かロボットかを区別する
例:「営業部長が承認」「システムが自動判定」
🔀3. Condition(条件)
「その作業は、必ず毎回同じようにやりますか?」
• 分岐条件を洗い出す
• 例外パターンを特定する
例:「金額が10万円以上の場合」「緊急フラグがある場合」
🔄4. Handoff(引き継ぎ)
「次の人にどうやって依頼(通知)しますか?」
• タスクの受け渡し方法を明確にする
• 通知手段を定義する
例:「Slackでメンション」「メールで通知」「ステータスを変更」
⚠️5. Exception(例外)
「もし条件が違ったら(イレギュラー時)、どうなりますか?」
• 異常系の処理を定義する
• エスカレーション手順を明確にする
例:「エラーの場合は管理者に通知」「3回失敗したら手動対応」
暗黙のルールを「条件分岐」に変える
人間は暗黙のルールに基づいて判断しますが、ロボットは「空気を読みません」。
❌Before:人間の暗黙ルール
「緊急っぽかったら
早めに連絡して」
問題点:
- • 「緊急っぽい」とは?
- • 「早めに」とは?
- • 判断基準が不明確
✓After:ロボットが理解できる条件分岐
IF:
件名に「至急」または「緊急」が含まれている
THEN:
Slackで担当マネージャーにメンション通知
ELSE:
通常のスプレッドシートに記録する
🎯 ポイント
ロボットは「空気」を読みません。「どのデータをトリガーにして道を変えるか」を定義するのが分岐設計です。
🔧プロセス記述を「Make.com」に翻訳する
フローチャートが書ければ、自動化の実装はパズルを組み立てる作業に変わります。
設計図から実装への変換
| 設計図の要素 | Make.comでの表現 |
|---|---|
| プロセス全体 | Scenario(シナリオ) |
| 長方形(処理) | Module(モジュール) |
| 楕円形(開始) | Trigger / Watch系モジュール |
| ひし形(分岐) | Router + Filter |
| 矢印(フロー) | データのマッピング |
実装イメージ
(トリガー)
(分岐)
✨ 重要
フローチャート通りの形が、そのままツール上で再現されます。
初心者によくある失敗パターン
⚠️1. タスクの境界線が曖昧
問題:
「見積書を作成する」のような大きすぎる単位で考えてしまう
解決策:
どこまでが「入力」で、どこからが「確認」か。区切りを明確にしましょう。
⚠️2. 「他者への依頼」が消えている
問題:
「終わったら次の人に渡す」という記述では不十分
解決策:
「メールで通知し、ステータスを変更する」という具体的なアクションとして記述しましょう。引き継ぎも立派な「手順」です。
⚠️3. 粒度がバラバラ
問題:
「PCを起動する」と「決算を完了する」を同じレベルで書かない
解決策:
適切な粒度(モジュール単位)を意識しましょう。自動化ツールの1つのアクションとして実行できるレベルが目安です。
プロセス思考は「後天的スキル」です
業務をプロセスとして分解する力は、特殊な才能ではありません。エンジニアであっても、経験を通じて身につける技術です。
スキル習得の段階
現状の業務
5つの質問を繰り返す
可視化(フローチャート・スイムレーン)
プロセス指向(Process Mindset)
💡 ポイント
最初はうまくいかなくて当たり前です。
「5つの質問」を繰り返すことで、徐々に脳が「プロセス指向」に変わり、業務の解像度が上がっていきます。
📚まとめ:さあ、業務をロボットに説明しよう
1️⃣曖昧さの排除
「いい感じに」をやめて具体的指示へ
例:「確認する」→「セルA1の値が空白でないかチェックする」
2️⃣可視化
フローチャートとスイムレーンで地図を描く
• 業務の全体像を図で表現
• 担当者の境界を明確にする
3️⃣分解
タスクを手順(モジュール)レベルまで砕く
• 実行可能な最小単位まで分解
• それぞれの手順を明確に定義
4️⃣実装
描いた地図をMake.comでなぞる
• フローチャートをそのままツールで再現
• モジュールを組み合わせて自動化を実現
🎯 最後に
あなたの業務知識(ドメイン知識)と、このプロセス記述力が組み合わさった時、強力な自動化が実現します。
まずは1つの業務のフロー図を描くことから始めましょう。その一歩が、業務自動化への確実な道筋となります。